第4回例会講演要旨「クオータ制ってなに?―我国の女性議員比率が世界121位の現状を見る」

講師:河村吉宏氏(元京都新聞論説委員)  2012317

 
講師の河村氏は、京都府女性政策専門家会議委員、京都市男女共同参画懇話会委員などを勤め、現在は、NPO法人
京都自由大学理事・運営委員、「韓国併合」100年市民ネット事務局員としてご活躍である。男女共同参画問題にたいへん
お詳しい。

1
.男女共同参画の国際比較
 
まず、日本の男女共同参画の国際比較をデータで説明して下さった。政治分野では、国会議員(下院、衆議院)に占める
女性の割合は、IPU(列国議会同盟)の調査によると、20113月現在、186カ国中、日本は第121位である。1位はルワ
ンダ。スウェーデン3位、ノルウェー10位、ドイツ19位、フランス61位、アメリカ71位、韓国81位。上位25カ国の内訳は、
発展途上国12カ国、ヨーロッパ12カ国、オセアニア1カ国(ニュージーランド)。

 
次に経済分野では、世界経済フォーラムが2008年に発表したGGI(ジェンダー・ギャップ指数(Gender Gap Index))では、1
28カ国中、日本は98位。政治(国会議員、閣僚の男女比)、経済(賃金の男女比)、教育(識字率の男女比)、保健(平均寿命
の男女比)などの分野における男女のギャップを指数化したものである。

 
国連開発計画(UNDP)は2009年までGEM(女性開発指数(Gender Empowerment Measures))を発表してきた。政治・経
済における女性の参加と意思決定力、男女の賃金差などを数値化したもので、日本は58位。2010年からGII(ジェンダー不
平等指数(Gender Inequality Index))に変更し、妊産婦死亡率、初等・中等教育の男女比、女性の労働市場参加率などでジ
ェンダー平等度を数値化した。それによると、138カ国中、日本は12位。オランダ1位、デンマーク2位、スウェーデン3位、
ドイツ7位、フランス11位。アメリカ37位、中国38位。(これには政治分野は含まれていない。)

 
以上、色々な統計による日本の順位を見てきたが、それらから分かることは、日本は政治、経済分野における男女差が
大きいということである。また、これらの分野で上位を占めている国は、ほとんどが選挙において何らかのクオータ制を採用
しているということである。

2.「クオータ制」(割当制)とは何か。 〜世界の現状〜
 
そこで、「クオータ制」(割当制)とは何か、という問題になる。クオータ制とは、積極的改善措置(ポジティブ・アクション、ア
ファーマティブ・アクション)の1形態。過去の社会的・構造的差別によって不利益を被ってきた人種的少数民族や女性に対
して、一定の範囲で特別のシステムを導入して実質的な平等を実現する措置を意味する。政治分野におけるクオータ制と
は、選挙において候補者や議席の30〜50%を女性に割り当てるもの。立法(憲法、選挙法)による法的クオータ制と、政党
による自発的なクオータ制がある。世界全体では、20068月の時点で、国会議員のクオータ制を憲法で定めているのは
14カ国、選挙法で定めているのは38カ国、政党が綱領で定めているのが73カ国。

 
ノルウェーはクオータ制発祥の国とされる。1974年に自由党が党組織にクオータ制を導入。その後左派社会党が候補者
リストにクオータ制を採用。クオータ制をジッパー制(比例代表名簿に候補者を男女交互に登録する方法。当選者の男女比
率が同数になる)と併用した。その結果、女性議員が急増。1986年に女性首相が誕生し、閣僚の4割を女性が占めた。この
動きはウェーデン、アイスランド、フィンランドなど北欧諸国に波及した。自治体議会の選挙で男女とも議席の40%を割り当
てることを規定。地方議員の殆どは無給である。

 
ドイツは、伝統的な男女の役割意識が強かったが、1987年の緑の党のクオータ制(比例代表制候補者名簿で、男女交互
に登録する)採用で、飛躍的に女性議員が増加。現在殆どの自治体で女性議員が2436%を占める。現在メルケル首相の
下、閣僚の3分の1以上が女性。

 
フランスも伝統的に男性中心社会で、フランスの女性開発指数(GEM)はヨーロッパ諸国の中で低く、改善が課題だった
が、憲法が改正され、パリテ法と呼ばれる、候補者名簿を男女同数とすることを定める法律が成立。2001年には、女性議
員の比率が22%から47.5%に上昇。44人の市長が誕生した。

 
イギリスは、ツイニングと呼ばれるクオータ制に似た制度を導入。1999年には女性議員は60人から120人に倍増した。

 
アメリカは小選挙区制のため、クオータ制はとられていない。アメリカは自由主義を標榜しているが、女性開発指数
GEM)はそれほど高くない。

 
韓国は、儒教の国で、戸主制をとっているので、女性が活動しにくい情勢だった。選挙区では地域に地盤をもつ男性議員
が圧倒的に強い。しかし、金大中が大統領になり、女性省ができた。2008年の総選挙での女性当選者は、選挙区14
 (5.7%)
、比例区(50%)。比例区に偏っているが、比例区は数が少なく、1期しか立候補できない。しかし女性議員発議の法
案提出数が男性議員のそれを上回り、また、戸主制廃止など、多様な女性政策が取り上げられていて、国会活動は活発。
現在、3大政党の党首は女性。(日本では世襲政治家が多いが、韓国も同じで、女性は、父、夫が政治家だった場合が多
い。)この4月には総選挙があり、12月には大統領選挙がある。セヌリ党の大統領選候補者は女性(朴・元大統領の娘)であ
る。女性の政治進出は確実に進んでいる。 

3
.日本の政党は無関心
 
さて、日本はどうだろうか。政党の多くはクオータ制に無関心。2010年に全国フェミニスト議員連盟(クオータ制を提唱して
いる)が11の政党に出したアンケートに回答したのは6政党――@民主、自民、公明、日本創新党は、実行予定は「未定」
と回答。A社民党は「実行済み」と回答。目標は4060%で、党大会代議員に各都道府県1名の女性枠。党三役の1人は
女性。B共産党はクオータ制には回答なし。しかし「2010年参議院選の比例候補の50%を女性に」「地方議員の3分の1は
女性」と記載。

 
現在の6党の女性議員の比率は、民主:衆20(12.4%) 参20(18.9%)、 自民: 衆8( 7%) 参 15(18.l%)、 公明:
3(14.3%) 参3(23.8%) 社民: 衆2人(29%) 参1(20%)、 共産:衆 1(11.1%) 参1(14.3%)

 
日本でのクオータ制の歴史を見てみると、日本新党の細川内閣が最初に党として導入した。その後、社民党が土井たか
子党首のときに採用。選挙で「マドンナ旋風」を起こす。土井党首の「山が動いた」の科白は有名。自民党の小泉首相が、
「小泉チルドレン」として、郵政民営化に反対の議員の選挙区に女性を送り込んだ。その反動もあって、多くは政治家として
は消えている。民主党は岡田代表の時、クオータ制についてヒアリングを行い、『女性候補の発掘育成に努力する』と発言、
「女性支援基金」(後の「民主党水と種基金」)を発足させ、男女共同参画社会づくりを進める女性の候補者に支援金を支給
し、ある程度の実績をあげた。

 
現在、男女共同参画社会が当たり前になってきているスウェーデン、フィンランドなどでは、クオータ制見直し論が出され
る中、日本ではどうか。国政に影響を与えるレベルでのクオータ制の実施を取り上げる場合、いつも憲法論議になる。日本
の憲法は男女平等が記されているので、クオータ制は憲法違反である、という主張もあるが、違憲問題については男女共
同参画社会の実現やその形成を目的とする「男女共同参画社会基本法」(1999年制定)がその盾になりうるのではないか
とも話された。

 
その議論も含めて、クオータ制は日本に根付くのだろうか。障害としては、@日本では議員職が既成政治家の既得権益
とつながり、職業、家業となっている。そこに外部から、特に女性が、食い込んでいくのは非常に難しい。ヨーロッパやアメリ
カでは、議員職は職業ではなく、ボランティアである。A比例区こそ、クオータ制を実行するのに一番効果的な方法であるの
に、比例区の数が限られている。小選挙区で落ちた候補者が比例区で救われるという現状では、難しい。B違憲判決が確
定している一票の格差問題も、政党と議員の利害関係の調整ができず、選挙法改正ができない。C男女共同参画の動き
に対する反動もある。

 
以上の問題点を指摘したあと、最後にクオータ制を実現するにはどうすれば良いだろうか、という点に移った。それには
以上にあげた点の修正に地道に取り組んでいくしかないが、あとは、世論のあと押し、あるいは国際的圧力が必要ではな
いか、という結論でお話は終わった。

 
さすがに新聞社の元論説委員の方だけあって、豊富な資料とデータを使って、説得力のあるお話だった。時間の関係で
質問は2,3にとどまったが、質問は最後の何故クオータ制が日本では前に進まないのか、の問題に集中した。決め手にな
る解答はないものの、最も重要な点は結局は女性の意識の改革ではないか、と指摘した会員もいた。いただいた資料のな
かで、国家公務員採用者に占める女性の割合は26.1%(目標30%)と、まずまずなのに、国の本省課長相当職以上に占める
女性の割合が2.2%と少ないのはまだまだの感がある。男中心の社会が歴然としている。先進国ノルウェーでは女性の政治
進出が当たり前になり、クオータ制はもう不要という見直し論が起きているのに比べ、我が国の膠着した政治風土をどう打
開したらよいのか、クオータ制実現を阻む課題の多さにため息をつきながらも、この制度は未来を拓くひとつの大きな手段
であると多くの人が思った講演会であった。