総会講演要旨「これからのがん治療」

講師:勅使河原計介先生  2011423
 
 医学の進歩により、感染症などによる死亡率は減少したが、反面、高齢化によりがんが増加し、3
人に1人ががんで死ぬ時代となった。がんの治療法としては、手術療法、化学療法、放射線療法が現
在三大療法と言われているが、現状を見るとそれらには限界がある。化学療法の抗がん剤の場合、薬
に対して耐性ができたり、副作用が出たりして治療効果が減少する。又、放射線療法の場合は、がん
細胞だけでなく健康な細胞まで破壊し、その結果、生体の免疫力の低下を招く。
 がん治療の大きな問題点は、がんが体の中で色々な場所へ転移することである。胃がんの場合、早
期発見では5年生存率は90%以上であるが、遠隔転移した場合、その発見は非常に難しく、現在生
存率は5%以下である。
 免疫療法とは、3大治療法ががんをいわば外部からの力で押さえ込むのに対して、人間の体に備わ
っている免疫の働きを活性化してがんを殺す方法で、副作用が少なく、患者本位の治療法としてその
評価が高まっている。現在、分子生物学や細胞生物学の発達により、がん細胞の増殖に関わる分子を
標的とした薬を開発しようとする方向に製薬会社は転換している。免疫療法を、より効果の高い放射
線治療、分子標的薬治療などと併用して、患者本位の治療を行うことで、顕著な治療実績が上がって
いる。今後のがん治療は、@早期発見、A放射線治療、B分子標的薬剤の開発、C免疫療法、D遺伝
子治療の方向へ進んでいくと思われる。
 お話を聞いて、がんの治療に決定的な治療法はまだ見つかっていないとはいえ、10年前に比べる
と飛躍的に進歩していることがよく分かった。私たちみんなに関心の深い問題であり、講演の後、活
発な質疑応答が行われた。